ししおどし

さて、コアなマニアさんからししおどしについてまとめてくれとのご要望をいただきましたので製作記など



ししおどしは添水(そうず)ともいいまして、昔は畑を荒らす害獣を驚かして追い払うための実用品だったそうです

今じゃ和のテイストを際だたせるためのアイテム、庭園でしか見たことがありませんがね






で、これを作ってみましょう

当然僕もシロートですから「水がたまってギッタンバッコンするシーソーを作ればいいんだろ?楽勝!」などと甘く考えていたのですが

やはり奥が深いシロモノでございました

温泉丸に付属しているししおどしは、先日こちらで温泉丸の記事を書いたときのバージョン7.3からさらに進みまして、今現在のバージョンは18.5となっております



なかなかうまくいかんのだよなぁ









・・・あ・・・・作り方でしたね、こりゃ失礼



まずは材料となる竹を用意します

地主に断りをいれて竹を切らせてもらいます

好みもあるでしょうが、ものまに屋的には太さ8センチくらい、節の長さ13センチくらいのモノが音が良いように感じます

太くなると音が低く、逆に細くなると高くなる傾向があります

あくまでも傾向でして、肉の厚さなどの個体差がありますので、結局は山ほど切り出して来て、一本ずつ叩いてみては音を確かめるしか方法は無いようです



材料は孟宗竹の方が太くなるので良さそうです

写真は孟宗竹、節のところが1段ですね

節が2段になるのが真竹、これはあまり太くなりません




ししおどしの音色は素材となる竹の寸法でほぼ100%決まります

当てるモノはある程度硬ければ鉄でも石でも木でもそれほど音色は変わりません



温泉丸に置いてあるししおどしを見て、「このししおどしは音が悪い。竹が当たるところに石を置かないからダメなんだ」などと語っているダイバーさんもおられますが

そんなことも試していない僕だとお思いか?



気に入った音の竹を見つけるまでひたすら切りまくれ





気に入った音色の竹が見つかったら先端を斜めにカットします

この斜めにカットした節と、その隣の節のふたつが水が溜まってウェイトになる部分です

シーソーですからその2節にバランスがとれる長さで全体の長さが決まります

切って短くなるとまた音色が変わるので注意しましょう




斜めにカットした節の底は1/3くらい穴を空けておきます

この1/3というのがキモです

それから斜めにカットするときは節をまたいで途中に節を残すのもコツ

溜まった水がこぼれるとき、何もないタダの筒だと竹が水平くらいになった時に水が一気にこぼれ落ちてしまい、充分傾きません

節を2/3ほど残すことで溜まった水が「コポッコポッ」と音を立てつつ時間をかけてこぼれ落ちてくれます

先端にわずかに残した節は流れ落ちる水の方向を上向きに変え、先端を押し下げる力を発生させてくれます

これで音を立てるに十分な高さまで竹を持ち上げることができるようになるわけです




次に支柱となる棒を通すための穴をあけます

空の時、バランスする重心よりはできるだけ先端より

でも水が溜まったときバランスする重心よりは後ろよりに

そして竹の中心軸より若干下にあけるのがコツです

中心軸よりも下に軸を通すことにより、傾くとき、傾く側に重心が移動してくれます

水をこぼすときは先端側に重心が移動し、音を鳴らすときは後側に重心が移動する

竹の動きが大きくなりやすいわけですね

やりすぎると傾いたまま戻ってこなくなりますのでほどほどに

これ以上細かいコトは書いてもしょうがないので知りたい人はメールでもよこせ





できたモノをガスバーナーで炙ります

聞くところによると生の竹は油分を多く含んでいて、その油分が腐りや割れの原因になるのだとか

建築材料として売っている竹は「さらし竹」もしくは「白竹」と言いまして、苛性ソーダで煮ることによってこの油分を抜いているのだとか



よぉぉし、苛性ソーダを手配して・・・って苛性ソーダは劇薬です

手に入れるのも面倒なら使い終わって処分するのも面倒です

ということで今回やっているのは「火ざらし」

火で軽く炙ると油が熱で浮き出てくるんです

これを布でぬぐいながら・・・と、調べたところには書いてありましたけど

この竹の油ってのは常温ではカチカチに固まる性質があるみたいでして

そうとう熱いうちにサッとぬぐわないと取り去ることができません

残ったまま炙り続けると、この油が気化熱を奪うみたいでいつまでたっても作業が終わらない

いきなり真っ黒に焦げたりもする



そこでものまに屋的手抜き型火ざらし法

サッと炙って全体に油が浮いたらスチールウールとクレンザーでゴシゴシ洗い流しちゃう

で、水気を拭き取ったらまた炙る

これを何度か繰り返すと竹の油が抜ける

炙る前と炙った後

ある程度油を洗い流してから炙ると表面の薄い緑色の皮が炎にあてられてパリパリと無くなっていく

その下から現れるのは茶色い例の色

これをやったのとやっていないのとでの耐久性の違いについては確認の実験はしていませんが、まぁ気分の問題としてスルーして欲しい






テキトーに作った支柱と「叩き石」を兼ねた土台にくっつけて完成だ








余談ながら2023年になってから追記


この元記事を書いたのが2013年とかでしょうか

で、10年とか経った今となっても相変わらず「ししおどし」 「良い音を鳴らすには」とかそういうキーワードでネット検索してこの記事にたどり着いている方が多いようで


わたくしの個人的な所見ではありますが

いわゆる「カッコーーーン・・・」というあの音を出したいのであれば工夫しなければならないのはししおどし本体ではなく周囲の環境であると考えます



別記事で「水琴窟」と呼ばれる物の製作に挑戦しておりますが

基本的な考え方はあちらと同じなのではないかと


水滴が水面に落ちる時の小さな音を反響させてポォォォーーーンとかそんな音に変化させるのが水琴窟

「ししおどし」に対してたぶん多くのみなさんがイメージしている「カッコォォォォン」のあの「ォォォォォン」の部分に関してはししおどしという音源によるものではなく音を反響させる周囲の環境によるものであると考えます



日光東照宮の鳴き竜にならいますれば、たとえば設置したししおどしの両側に音を反射しやすい材質の壁を平行に配置してみるとか

平行な壁の間で音が何度も反射して往復することでフラッターエコーという物が発生します

音を聞かせたい方向にわずかにハの字に開かせても良いかも


音源をあらゆる方向で平行な壁で覆うとなりますと行き着く先は球形のカバー

さらに強く反響させたいのであれば前述の水琴窟の記事にならって球形のカバーを製作してししおどしを覆ってしまうのが手っ取り早いかと考えます



ししおどし本体からは何をどう工夫しても「コンッ」というていどの小さな音しか得られないと思います

音はエネルギーですから音量を大きくしたければ、数十センチ程度の小さな竹ではなく、直径50センチとか、全長4mとかのパイプとか使って大型化すればエネルギーは単純に増えますね

それでも「カコン!」が「ガコン!」になるくらいか



それを「カコォォォォオン」にするにはどうしても音源を反響させるデバイスが別途必要になるのではないかと愚考します

いわゆる庭園といいますか、植物が多い環境ではよけいに音は減衰しやすいです

和風の庭園で、むき出しのししおどしでどこにいても聞こえるくらいあからさまな「カッコォォォォォン」て音を求めるのはかなり難しいと思います

加工済みの「カッコォォォォォン」という音源をスピーカーから流しちゃうのが一番簡単かなあと思いますが



それでもどうしてもナチュラルでやってみたいという求道者の方はですね

とりあえずはししおどしの両側にコンクリートブロックとかで平行な壁を作るとかその辺からはじめてみてはいかがでしょうか?


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