2017/07/26記
2017年7月16日
ミニバイク6時間耐久レース、ミニろく第3戦でございます
早朝6時30分会場入り
ひどい暑さと湿気
タフなレースが予想されます
例によってセッティング備忘録
このレースに備え、かねてより17インチタイヤのテストを繰り返してまいりました
我々が使用しているエイプやXR100といった車両においては、NS-1用のホイールとアクスルカラーを使用することで車体側は無加工で17インチホイールに換装できます
現在使用している12インチタイヤよりも車高が高くなり、現状最終コーナーで思いっきり倒し込むとフレームが接地してしまうという問題を解決できますね
12インチに比べて転がり抵抗が小さいというのも重要なメリット
デメリットは絶対的なグリップ力不足
桶スポを17インチのNS50F等で走っている速い人達にうかがったところ、ブリジストンのBT39SSチューブ用前輪タイヤを前後に使用するのがこの20年以上変わらない定番なのだとか
チューブレスタイプのタイヤに比べてその重量が格段に軽いのだとか
非力なエンジンで戦うミニバイクレースにおいてはほんのわずかな重量の差が勝敗を分ける
これはまあスプリントレースに限っての話であると個人的には思いますが
特に高速で回転する部品の軽量化は慣性モーメントの低減という意味でも加速性能に与える影響大
ほぼすべてがチューブレス用に移行したBT39SSのラインナップの中でなぜ1サイズだけチューブ用が残されているのか以前から疑問だったのですが、レースの皆さんが継続して使い続けていたせいだったんですね、納得
ということでウチのマシンである烏賊エイプにもこのBT39SSのWT(ウィズチューブ)を履かせてテストしてきたわけです
結論としては不採用となりました
たしかにチームの中でも賛否両論いろいろあったんですが
決め手になったのはタイヤの寿命
我々のマシンと我々の乗り方、その条件下においては2時間ほどの走行でタイヤがほぼ丸坊主になってしまうのです
これでは6時間のレースを走りきる事ができません
12インチタイヤならなんとか6時間もつんですよ
17インチタイヤを選択した場合、レース中に2回のタイヤ交換が必要になる
その作業に要する時間的な余裕を生み出せるほどの速度的メリットは17インチには存在しない
てことで結局いつも通り12インチタイヤ、フロントダンロップTT93GPF、リアブリジストンBT601SSミディアムコンパウンドの組み合わせで走る事になりましたよ
エンジンはそろそろ限界だったのでこのレース前に全バラオーバーホール
クランクと吸気バルブが限界で新品に交換しましたがさすがほぼノーマルエンジン、それ以外はなんともないぜってなもんでやっぱ頑丈なエンジンは良いねえ
ほぼ1年運用しましたが、ヨシムラキットとか使ってたらこうはいきませんね
分解整備してくれた埼玉は桶川のレースショップのオヤッサンいわく、ピストンにデトネーションの兆候が認められた、とのこと
再使用できる範囲だったのでそのまま使用したそうですが
5月の第2戦でちょっとよくばってスロージェットを#45まで絞り込んでたんですよね
たぶんこれの影響だと思うんですよデトネーション
フィーリングも悪かったんで第2戦直後に#50に戻しました
メインジェットは#105でいったんですが、高温高湿の今回はちょっと濃すぎた模様
後半はエンジンの回転が不安定になるレベルでまったくパワーが出せませんでした
17インチ化を断念した今回のレースの目玉と言えばリアサス
バネをさらに硬くしましたよ
1150ポンド/インチてのはニュートン表記にすると200N/mmあたり
いままで使ってきた180N/mmに比べると格段に硬い
調整に出していたリアサスが届いたのがレースの数日前ってんでテスト無しのぶっつけ本番
いざ走ってみるとフィーリングが変わりすぎていてさすがに今回はちと苦労しました
ということでいよいよスタート
今回もウチのIT担当NORY君がまとめてくれたチャートをもとにレースを振り返っていきますよ
9:30 エンジン始動済みの状態からの変則ルマン式スタート
スタートライダーがコース反対側からマシンに駆け寄って来て飛び乗りスタートする方式ですね
スタートライダーのNORY君が好スタート
最初の周回を総合2位で帰ってくるもその後はマシンのパワー不足でズルズルと後退
まるで中学生の校内マラソン大会を見ているようだ
どこの学校にもいたでしょ?
ただただ目立ちたいだけのお調子者がスタート直後だけ全力疾走してトップで校庭を出て行くもそれっきりで終了、あとはサボって走らずゴールすらしない、みたいな定番の展開
いやいや我々は最後までちゃんと走りますけどね
レース序盤は味付けが変わりすぎたリアサスへの対応に各自苦労しつつもそれなりに安定した展開
第1ライダーNORY君、第2ライダーふぢやんとつないでクラス5位で第3ライダーの私
ここで今回のレースで起こったイベントというイベントがすべて集中して私に襲いかかる
コースイン数分で第一コーナーで大きな転倒が発生、セーフティーカーが入って全車スローダウン
追い越し禁止
ケガをしたライダーと破損した車両を回収する間、ズルズルダラダラとコースを周回し続ける
10分ほどという比較的長い時間の後にシグナルグリーン
その直後にアクシデントが私を襲う
SC解除からわずか数周
最終コーナーでマシンを倒し込み、旋回に入った私の車両
その外側から強引にラインをかぶせてきた同クラスの他チームのマシン
相手はヨシムラキット使用でそのエンジンの出力差は十数%
通常ならより多くの距離を走らなければならないところをエンジンの出力差任せに外側からグイッと私の車両を追い抜き私の前へ
走行ラインが交錯する
私が走るその前に割り込んできた他チームの車両
ここで私はレースでのはごく当然の思考パターンで判断してしまったのです
このレベルの速度差ならこのまま自分が全力で加速し続けても前の車両にぶつかる事は無い
あっちはこちらよりもよっぽどパワーが出ているんだからこのまま先に行ってくれる「はずだ」と
マシンを最大限に寝かし込んだ旋回の、その一連の作業の後半で私はそう考えて非力なエンジンのスロットルをあらかじめ全開に固定し、最終コーナーから続くホームストレートへの立ち上がりに備えたのです
と、そこでまったく想定外の事態が発生
どんどん先に行ってくれるはずだったその前走車が急激に失速し、フルスロットルを当てて旋回中の私に急速に迫ってきたのです
私の前輪に対して一気に迫りくる前走車の後輪
このままでは追突する
これ以上ラインを内側に振る事は物理的に不可
マシンを立てて外に逃げるか?
今現在走っているラインはこの先コースからはみ出さずに通過できるギリギリのライン
これより外に振ればコース外側の荒れたダートに高速で突っ込まねばならない
狭いエスケープゾーンのその先はガードレール
これは自分が大怪我する予感しかしない
結局フロントのブレーキを思いっきり握り込んで自らスリップダウン(転倒)
文字に起こすと長いですけどね
実際はほんの数分の一秒の話ですよ
迫り来る前走車の後輪
マシンを一杯に寝かし込んだタイヤのグリップ限界のところからのフロントロック
一気に迫る路面
ヘルメットを削るアスファルト
景色が回る
武道における受け身と一緒
自らの意思で転ぶ
これが一番ダメージが少ない
幸いにも他の車両は巻き込まずに済みました
手を上げて後続車両にアピールしながらマシンに駆け寄り、車両を起こしてそのまま目の前のピットロードへ人力で押して退避します
車両を押しながらダメージチェック
クラッチレバーの受けがボッキリ折れた
シフトペダルも曲がってる
ミッションを操作できない
ニュートラルにできない、クラッチも切れない
転倒したときにキャブからこぼれた生ガスを吸い込んで一時的にかぶったらしくエンジンは全く始動しない
エンジンに直結したままの後輪を無理矢理人力で回しながら、ピットへ向かう下り坂を押し続ける
マシンが重い
息が切れる
目の前が真っ暗になる
ピットへ向かう導入路の半分あたりで一度停止
ぶらぶらしていたクラッチケーブルをホルダーの残った部品に無理矢理引っかけて引っ張り、クラッチを切る
あとちょっと
あと100m
ウチの連中がピット入り口で待ってるのが見える
でも全然距離が縮まらない
肺が酸素を求めて悲鳴を上げはじめる
「どうした何があった!?」
「大外から無理矢理かぶせてきたマシンがこっちの前をふさいだ上で急減速しやがった!クソバカヤロウ1000回くらいくたばれファッ○!!」
感情の高ぶるままに罵詈雑言を吐き出させてもらう
ピットから離れたところでスマホいじってたNORY君なんかもかき集め、マシンをピットに押し込み応急処置
レースは何があっても自己責任
フルバンクで走っている前走車の目の前に無理矢理割り込んで急減速
立ち上がりの加速しかしない局面でこんなことがあるとは思わんかった
それでも
そんな走り方をするライダーもいるのだということも含めて周囲の状況を読み切れなかった自分自身のミスなのです
責めるなら自分自身の未熟さを責めねばならぬ
悪態を付くのは自由ですが抗議するのとは違う
それがレースというもの
あくまでも何があっても自己責任
この緊急修復作業で20分以上のピットストップ
我々は大きく順位を落とし、勝負の圏外へ脱落
その後レースに復帰するも転倒時に若干燃料がこぼれていたようで、今度はガス欠
ああ、ホントもういろいろと読み違えまくりで自分が嫌になるな
その後、最終ライダーの舟超氏に受け継いで、持ち時間の45分をほとんどまともに走らないまま私の役目は終了
良いところまったくなし
何があっても自分の読み違い
今回のこのトラブルも状況を読み切れなかった自分の未熟さゆえ
自分自身にブツブツとそう言い聞かせているところに、いつもご一緒してくださっている他のチームのリーダーさんがヒョコッとあらわれてひと言
「こけちゃったのぉおぉおお?」
さすがに大人げなくカチンときてしまいました
俺が走っていたラインに大外から無理矢理かぶせてきて急減速したのはアンタのチームのマシンだっ!
そう叫びたくなるのをグッとこらえ
いやあんまり言いたくはないんですけどこれこれこういうわけでね
私が状況を読み切れなかったというあくまでもこちらのミスなんであなたにわざわざ文句をいう筋合いのものではないですが、今みたいなちゃかし方はさすがにちょっとカチンときますからやめてください
なんて話をさせていただきましたらのちほど「あらためて確認したところうちのライダーがミスをして旋回中に失速したらしい、あなたのチームには大変申し訳ないことをした」と丁寧なご挨拶をいただきました
故意にやったんじゃなければそれで良いんですよ、残りのレースを精一杯走りましょうね
それでチャラ
これがレースというもの
組み直したエンジンの想定外の燃費の悪さに2回の給油で走りきる予定だったのを3回給油シフトに組み直した以外、その後の展開は順調
とにかく暑い
マシンよりも人間の方が熱ダレしてやばい
水分を取っても取っても毛穴からすべて流れ出ていく
消耗しきった己を鼓舞するV8祈りのポーズ
4人のライダーで1走45分を各ライダーが2セットづつ、計90分の走行
私の転倒で大きく遅れた分を数時間かけてジワリジワリと追い上げる
4時間の時点で前を行く#8をとらえてクラス4位に浮上
そして5時間
私の第2走目でその先を行く#9をとらえクラス3位に
ところがその直後、またしても違和感が私を襲う
尻を乗せているシートカウルがフワフワグラグラと
シートカウルを固定していたM6のボルトが振動で疲労破断
これの応急処置のために続く最後のピットインで数分のロス
その間に#9に再度追い抜かれてしまう
現時点でクラス4位
最後のライダーは我がチームの切り札
「変態バイク乗り」との異名も高い舟超氏
クセのあるバイクに乗らせたらめっぽう強い
今回のリアサスの大幅なセッティング変更
そしてキャブのセッティングミスによるパワー不足
私とNORY君はラップタイムが前回のショートサーキット戦にくらべて平均で1秒ダウン
ふぢやんは0.5秒ダウン
全員が軒並み失速している中でこの変態(賛辞)バイク乗りだけは0.2秒アップ
「変態バイク・乗り」かはたまた「変態・バイク乗り」か
どこで区切るかで若干意味するところが変わってきてしまうため長年議論され続けてきてはいるのですが
ぶっちゃけ「舟超さんは変態」という結論で良いのだと思う
「このリアサス、小回りが効いて最短距離走れるから良いと思うなあ」
ぶっつけ本番での適応力がパネエす
そんな最終ライダー舟超氏の走行中、前を行く#9が第1コーナーで大きな転倒、SC投入
転倒したライダーが自力で動けず救急車が出る事態になりましてかなり心配していたのですが、その後の聞き込み調査でただ単に足が痙攣して動けなかっただけと判明
なによりなにより
今回は路面温度が極端に高かったせいか、転倒が続出
感覚的にはレースの6時間の間にイエローフラッグが振られている時間の方が長かったのでは無いかと思うレベル
そんな荒れまくりのレースも残すとことわずか10分となりまして
SCがコースアウトすると同時に整列してゆっくりとコースを周回していた全車両が全力加速開始
残り10分でこれって完全にスプリントレースじゃないですかああああ!
マシンにビタッと伏せたまま全力でピットウォール前を通過する舟超氏に魂のV8祈りのポーズ
例によって例のごとく
いつも通りの棚ボタ的展開
非力なノーマルエンジンで走る我々は力ずくで入賞することはほぼ不可能
とにかく壊さず、止まらず、走り続ける
トラブルで脱落していくチームが出てくる中、しっかりと生き残る
「他人のトラブル待ち」と言ってしまうと聞こえは悪いが頭から否定はできない
そんな恥もプライドも無い戦い方だけれども
「耐久レースは生き残った奴が勝者」
金をかけず、高い社外パーツを投入しなくても、レースの展開次第では入賞できる「こともある」
それでいいじゃないか
それくらいでいいじゃないか
マシンが速かろうが遅かろうが
何がどうあってもひとたびレースが始まれば持てる力のすべてを振り絞って全力で走る事には変わりないのだから
それが今の我々の戦い方
今回も例によって上位が潰れてくれた(言い方が悪くてすまぬ)「おかげ」でのクラス3位入賞
結局、我々にはこの戦い方が合っているように思う
壊さず、止まらず、淡々と走り続ける
最後までちゃんと立っていた奴が勝ち
今日も1日、全力で遊ばせていただきました
「あああああっ!今日も1日よく遊んだなあああああああ!」
帰りの道すがら立ち寄る温泉で、皆で今日の1日を振り返りつつ、ひとつ大きく伸びをして息を吐く
次の本コース戦は我々は不参加
ノーマルエンジンじゃさすがに無理
次は最終戦
冬のカートコース
暑いのも嫌だけど寒いのも嫌
特にここ富士の裾野の冬は冗談抜きで嫌なんだけども
まあグダグダ言いながらも結局は走るんだよな
我走る、ゆえに我有り
我々はバイク乗りだからな