ここまで来るともうさすがに目的のためには手段は選ばないというワタクシの性分が読者のみなさんにも浸透しつつあるように感じますが
その「手段」を行使することに懸命になったあげく
「手段」の行使のためにその本来の「目的」を見失ってしまうとなりますと
なんといいますか
ただのおマヌケさん
でしかないわけで
ええ、僕のことですよ笑ってやって下さいorz
これまでの経緯を振り返りますれば
僕ら定置網漁師は職業柄、「マキリ」と呼ばれるナイフを常に携帯しております
これがないと仕事にならない
たとえ水の中でも、です
潜水作業のときも「刃物」は必須
ところが
一般に購入できる「マキリ」はいわゆる普通の「鋼(ハガネ)」でできておりまして
非常に錆びやすいのですよ
潜る前に研いで行き
数時間潜って上がってくるともう錆びている、というレベル
これでは、ということで
まずは鍛冶仕事用のガス加熱炉を作ることからはじめて
自作のステンレス系鋼材製鍛造刃物の製作に挑戦したのはもう5年ほど前になりますかね
こういう工作仕事というのはとにもかくにもまず計画通りにすんなりできることはありませんで
数え切れないほどの試行錯誤の結果
100万円近い資金を投入し
ようやく打ち上がった数本のナイフ
その後、しばらく評価運用を続けておりました
それと同時にいわゆる「プロ」の手による製品を手配することも同時に
ステンレス鋼材の「鍛接」について数多くの有益なアドバイスをいただいた「武生特殊鋼材(株)」様のご協力のもと
近代的な工作設備が整った工場で製作されたステンレス系刃物の性能、というものもやはり見てみたい、と
武生特殊鋼材株式会社様は、地金と刃物用の鋼材を貼り合わせた「クラッド材」という刃物専用の鋼材を専門に生産されている企業でございます
担当の坪川様にいろいろと相談にのっていただきましてね
まったく錆びず、ピンピンに切れる素材というのはなかなか難しい
あったとしてもものすごく高価になる
ということで妥協案
海水中での使用を前提として
「ある程度の切れ味」と「ある程度の耐腐食性」を併せ持つ素材はないものか、と
お勧めされたのは「DPSstゴールド5」という武生特殊鋼材株式会社オリジナルの鋼材
マルテンサイト系ステンレスの心金を錆びにくいオーステナイト系のステンレス鋼材でサンドイッチした製品
サンプルとして送っていただいた鋼片をナイフに仕立て上げた物を約一年間潜水作業で使用したところ
自分で打ったSUS440CとSUS303の合わせ鋼によるナイフと比べてもそれ以上の良好な耐食性
これならば、ということで
本格的に製作を依頼
と言いましても
武生特殊鋼材株式会社様はあくまでも「鋼材」の生産メーカーでありまして
「小売り」は無し
「ナイフ一本分だけ材料売って下さい」ってのは無し
発注はあくまでも「ロット」単位
しかもできあがってくるのは鋼材のみ
その鋼材を切断し、成型し、焼き入れ、焼き戻しをかけて、グリップと鞘を取り付けてくれる「刃物メーカー」の協力無くしてはナイフの形にならないのです
ということでそちらの手配も平行して
武生特殊鋼材株式会社様に「最低重量」での鋼材生産を依頼し
できあがった鋼材を刃物メーカーに送付
そうやって製作されたナイフが
今日
僕の手元に届きました
数年の歳月を経て
ようやく満足のいく作業用ナイフが僕の手に
感慨深い物がありますな
46本もできちゃいましたけどね
いちおうこれでも「最低限」の「1ロット」だったんですけどね
20万円以上かかっちまいましたよw
錆びにくいので今までのように1年で使用限界、ということもないはずでして
まあ1本で3年もつと考えたらどうですか?
むこう138年分の作業用ナイフが今僕の手に
いったい何歳まで生きて、何歳まで作業潜水士やるつもりなんだよ俺?
妖怪にでもなるつもりなのか俺?
やりすぎましたね
かんぺきに
死ぬまでに使い切れない量の作業ナイフの在庫を抱えて今僕は
てことで、使ってくれる方をこのサイトで募集したところありがたいことに多くの方からご協力のお申し出をいただきまして
めでたく完売
その後もいくらかのお問い合わせをいただいておりますが、次にご提供できるのは40人以上の希望者が集まってからとなります
なんとも立ち消え感の漂うしょぼしょぼのクラウドファウンディング状態でアレですが、それでも良いという方は「今日の風景ブログ」のコメント欄からお問い合わせ下さいませ
希望者が定数に達したら次のロット発注します