足ヒレはバランスが命


今回はフィンです。


こいつほど、何を基準に選んだらよいかがわからないシロモノもそうはないのではないでしょうか。


ということでフィンの選び方を独断と偏見で。





まずは基本に戻って考えてみましょう。



フィンっていったいなんですか?




フィン自体にはエンジンやモーターのような動力は一切付いていません。

フィンというのは人間の力 を効率よく水に伝えて推進力を得る「道具」でしかないんですね。

フィンは人間とセットになってはじめて働くことができるもの。

フィン単体じゃなにもできませんし、よくカタログなんかにフィン単体で測定したわけのわからない数値がたくさん並べ立てられていますけど、あんなの何の意味もありません。

性能を数値化するならするで、どんな人間が、どんな風に使ったか、ってところまで含めたデータでなければ意味が無いと思うんです。

あまりカタログスペックに振り回されるのもどうかと思いますよ。





まぁこまかい数字や宣伝文句は置いといて。

僕の勝手な解釈で恐縮ですが、今現在手に入れることができるフィンは大きくわけてふたつのタイプに分けることができると思うんです。

オートマティック系 人間側のテクニックに頼ることなく、フィン側の構造で必要なブレードの動きすべてをフォローするように設計されているタイプ。

ブレードの動きはフィンの方で勝手にコントロールしてくれるので人間側は何も考えずにただ足をバタバタさせているだけで前に進むことができます。

アポロ・バイオフィン
(いわゆる先割れフィン)

マレス・Volo
(ブレードに関節が付いているタイプ)

マニュアル系 基本的には人間側でフィンの挙動をコントロールしてあげる必要があります。

ま、何も考えずにバタバタしても一応は進むんですが。

現在市販されているフィンはほとんどここに含まれます。

GULL・ミュー 等


オートマティック系のフィンでは人間側で何か工夫するような余地はほとんどありません。ただ足に着けてバタバタするだけ。

「それで十分。あたしゃ別に修行したいわけじゃないんだよ。」という人にはこういうのがオススメです。

「推進理論が従来と違う」とかいうのが宣伝文句のようですが・・・その推進理論とやら自体がいささか怪しげ。僕はどうにも納得できない。

推進の原理自体は他のフィンとまったく一緒。人間側で何もコントロールしなくてもブレードが水に対してちゃんとした角度を持って入っていけるようにデザインされているというだけの話、だと思う。



逆に、マニュアル系のフィンは人間側次第で特性が変わるのが特徴。

どんな足の動かし方をしても「そこそこ」進んでしまうというのが「ウリ」のオートマティック系は、裏を返せば効率の良い足の動かし方をしてスピードを上げようと思ってもやっぱり「そこそこ」にしか進まないということ。

テクニック次第でより幅広い状況に対応できる懐の広さはやっぱりマニュアル系の方が上。

試行錯誤を繰り返し、努力し、工夫した成果が確実に返ってくるという意味ではこっちの方が泳いでいて面白いと思います。

「フリッパー」のページで書いていることもこのマニュアル系のフィンを使いこなすことを目標にしています。





以上を踏まえた上で、その「マニュアル系」の中からどんなフィンを選んだらいいのか、をポイントごとにご紹介していきましょう。


それではまずはブレードから。



最近はラバーやプラスティックだけじゃなくて、FRPだとかカーボンだとかいろいろ出回ってますけど。

材質自体はプラスティックでもゴムでも大きな差は無いと思います。


大切なのは材質じゃなくて、そのしなり具合というか剛性のバランス。

フィンを手にしたらまずは先端とブーツポケットを手にもって曲げてみましょう。

一番大きく曲がるところはどこですか?

根元が曲がるようなブレードは問題外。

根元は硬く、先端にいくに従って滑らかに柔らかくなっていくのが理想的。

手で両端をもって曲げたときに先端から1/3くらいのところから曲がりはじめ、先端にいくにしたがってなめらかに曲がりがきつくなっていくブレードを選ぶと良いと思います。


こんな感じだ


このような形に曲がるものならば、あとはこのバランスの中で「全体的に硬い」とか「全体的に柔らかい」とか、ご自分のお好みで選んでくださいな。

プラスティック製のフィンではなかなかこういうバランスのフィンって無いんですよね。

安いし、カラフルなのは魅力ですけど、泳いでいて疲れるフィンはやっぱり使いたくない。

「ベテラン向け」としてありがちな「先端が必要以上に硬いフィン」は水の中でものすごく重く感じます。こういうフィンを履くと、その蹴り応えの重さにだまされて「おお、俺って速く泳いでるぜぇぇっ!!」とか錯覚してしまう人も多いですけど、実際は疲れるだけでそれほど進んでいるわけではないのですよ。



結局、スクーバダイビングにはちょっと小さめのゴムフィンが向いていると思う。

たまにロングフィンとかで潜ってる人も見かけるけど、タイムを競ったりするワケじゃないんだから、取り回しが効くとか、波打ち際で歩き回りやすいとか、そういうところも考慮した方がいいよ。たぶん。


さて、お次はブーツポケットについて。

どんなに良いブレードでも、やっぱり人間にフィットしなけりゃ意味がありません。

自分の足にピッタリとフィットした物を選んでください。



ブーツポケットのタイプには2種類ありますね。靴みたいになってるフルフットタイプと、ストラップで締めるタイプ。

できればストラップフィンはやめた方がいいと思う。

足のサイズって、長さの他に幅とか甲の高さとかいろいろあるでしょ。

ストラップフィンって足の長さ、いわゆるサイズというやつに対しては調節ができますけど、「足の幅」に対しては調節なんてできないんですよ。

足が小さい人がストラップフィンを履くとフィンの中で足が左右にグラついてしまう。これでうまく力を伝えられるわけがない。

小柄な女性が馬鹿でかいブレードを持つプラスティックのストラップフィンなんて買わされているのみるとちょっとカワイソウに思ったりするんです。

足にちゃんとフィットした小さめのブレードのフィンを履けばもっと楽に潜れるハズなのになぁ、なんてね。



フィンを買うときは、できることならいろんなフィンを履き較べて、ちゃんとフィットするものを選んで欲しいのです。

特に、ブーツポケット周りがペラペラに柔らかいフィンは要注意。

陸上での履き心地は良いのですが、ある程度長い時間泳いでいると、つま先に負担がかかって痛みを感じてくる事が多いです。

フィンスイムという競泳系の競技に使うフィンなんかだと、ポケットが土踏まずくらいまでしかないものがほとんど。確かにこの方がスピードは出るのですが、つま先にかかる負担も尋常じゃありません。痛くてとても長時間泳ぐ気にはなれないんですね。

スクーバダイビング用のフィンは海というフィールドで長時間履くものだから、ある程度ガッチリしたブーツポケットは必要だと思います。

ガッチリしたブーツポケットがあれば、つま先にかかるはずの負担を、より頑丈な足首の関節で受け持つことができるんですよ。


そんなわけで。

フィンってのはトータルで見た硬さのバランスが命。

ただ硬ければいい、とか、ただ長ければいい、とか、そんな簡単な物じゃないんですよ。

硬いだけで実用にはとても耐えないフィンもたくさんあるし、ただ長いだけのカッコだけフィンも腐るほど出回ってる。

釣り竿と一緒。根本はあくまでも硬く、先端にいくに従ってしなやかに。そしてなにより人間の力をブレードにちゃんと伝えられるフィット感。

結局は小さめのブレードを持つオーソドックスなラバーフィンがスクーバダイビングには一番向いていると思うんですよね。


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