2022 ミニろく第2戦 カートコース

2022/06/12記


2022年5月27日金曜日の夕方

例によって私は富士山の麓、御殿場の市営キャンプ場におりました



我々、富士スピードウェイで開催されておりますミニバイク6時間耐久レースに長いこと参加させていただいております

学生時代からの友人達と組んで参加させていただいているのですが、メンバー皆、今現在住んでいるところがかなりバラバラでしてね

前日にキャンプ場でバンガローをひとつ借りておいて、仕事が終わった者から三々五々集まってくるというスタイルを続けております

市営のキャンプ場のバンガローが1棟1泊1万円強でして、みんなで割れば1泊2000円

いつもお世話になっております本当に



で、金曜日の夕方ということで他に利用者も無く

仲間うちで御殿場に一番近いところに住んでいる上にお昼過ぎには仕事が終わる漁師稼業のワタクシ

当然チェックインも一番早い

テレビはありません

そもそもスマホという物を持っていない私はこういう場所でいんたあねっとに接続することもできず

こういうところに一人でポツンとなりますと、なんと言いますか

やることがないんですよ

「目的がキャンプ」ってんならこういった空き時間というのもまた違ってくるんでしょうけどね

このキャンプ場を利用する時の目的はたいがい「レースの前泊」でありまして

我がスズキエブリィ(軽のワンボックス)の中はバイクとか工具とか雨が降ったときに交換するためのレインタイヤとかでミッチミチでございまして

スキレットで肉でも焼いてランタンの灯りの下で優雅に食すなんていうオサレなキャンプシーンを演出できるようなグッズを積み込む隙間はどこにもないのです




なのでしかたなくノートパソコンを起動



他に誰一人いないキャンプ場で一人、エンジンの燃調マップとにらめっこ



何のことかわからない、という読者様のためにここであらためて説明しておきましょう

エンジン、内燃機関というものはですね、機械の中で燃料を燃やしまして、その発生した熱をあれやこれやしてタイヤの軸を回転させる力に変換しております

ガソリンなどの燃料が持つ化学エネルギーを燃焼によって温度というか熱エネルギーに変換し

温度が高くなると気体が膨張するという物理的な性質を利用して軸を回転させる機械的な運動エネルギーに変換する

てことでエンジンという機械の中で燃料を効率よく綺麗に燃やすってのが結構大事になるわけですよ



とにかく燃料が多ければ良いという話ではありません

たき火の上にどかっと薪を山積みに放り込んだら火は消えてしまいます

逆にガンガン燃えさかっているたき火に薪をまったく補充しなかったら火は消えてしまいます

燃料と空気のバランスが大事


バイクで使用しているガソリンエンジンでは、まず空気とガソリンを混ぜてエンジンに送り込み、機械の中で燃焼させてタイヤを回す運動エネルギーを取り出しております

ガソリンだけ送り込んでも燃えないんですよね

逆に空気だけ送り込んでもダメ

空気(酸素)と燃料を一番効率よく燃えるような比率で混ぜ合わせてエンジンに供給してあげなきゃならない



で、ガソリンとかの燃料てのは水素Hとか炭素Cとかが複雑に絡み合ってできておりまして、その組成ってのは先達の学者さんや技術者さん達が測定してくれております

で、理屈上は燃料1モルの中にはこれだけの数の水素と炭素が含まれてるんだから、これに対してこれくらいの空気を加えてやればちょうど全部がH2OとかCO2とかに結合して完全燃焼してくれるなっていう計算ができるわけです

そんな理屈で導き出されるのが理想空燃比

ガソリンの重さ1に対して空気の重さ14.7くらいで混ぜると計算上はよろしいですよ、と

ただこれはあくまでも「理想論」であって現実はそうでもない

たき火をしたって全部の薪が完全に灰になるまでちゃんと燃え尽きるわけじゃない

特に内燃機の中での「燃焼」というのは100分の1秒とかの短い時間の間に終わらせないといけませんので、理想通りに完全燃焼とはいかないわけです


で、実際のところ理屈通りに比率14.7で空気と燃料混ぜて燃やしても全然足りないんですよ

現実問題としては比率13とかそのあたりで空気と燃料を混ぜてやるのが一番パワーが出る

レースで使うエンジンは大規模な工場やプラントで使う発電機用エンジンなんかと違いまして、回転が上がったり下がったり、アクセルを開けたり閉めたりとかを頻繁に繰り返す物ですから

アクセルの開け始めはこのくらいの比率が良くて、アクセル全開で高回転域までウワァーっと回していくときにはこのくらいの比率が良い、なんてのがレースに関わる人間それぞれのノウハウだったりします



で、その燃料と空気の比率を調整するのが「燃調セッティング」という作業

昔はエンジンの前にキャブレタという霧吹きみたいな機械的な部品がありまして、その中の「ジェット」という燃料が通過する穴があいた小さな部品を穴の大きい物や小さい物に入れ替えることで空気と燃料の比率を調整しておりました

近年のバイク用キャブレタには大体「ジェット」が2個ついてましたね

アクセル全開の時に効く「メインジェット」とアクセル全閉から開け始めのあたりで効く「スロージェット」

この二つと、あと他にもちょこちょこある調整用のパーツの番手をいろいろと換えながらエンジンに最適な比率で燃料を供給してやろうと試行錯誤していたのですよ、昔は



じゃあ今は?

最近は「キャブレタ」というアナログ制御の機械にかわって「インジェクション」という電子制御方式が主流になっております

キャブレタ方式がエンジンが吸い込む空気の負圧を利用して霧吹きのように燃料を吹き出させていたのに対し、インジェクション式はまず燃料タンクの中に電気駆動のポンプを設置して燃料の配管に圧力をかける

その配管の出口に電子制御のバルブを取り付けて、そのバルブを「0.002秒開けなさい」とか車載のコンピュータで制御する

その「バルブを開ける時間」はあくまでもコンピュータ制御

周囲の気温や気圧でエンジンに流れ込む空気の中に含まれる酸素の量が変わる

キャブレタ時代は気温や湿度が低いときはジェットの番手を上げて、気温が高くなったり湿度が高くなったときはジェットの番手を下げる、なんてことをいちいちキャブレタを分解してジェット交換してやってきたのですが

今のインジェクション方式ではそれらが全部自動で電子制御されてます

エンジン周りがセンサーだらけになってて

圧力、温度、いろんな数値を拾って、そのデータを元に適切な量の燃料をエンジンに供給するようになってるわけです



便利な時代になったものです

とはいえ、それでも完璧ではありません

最終的には排気ガスの通り道に酸素濃度を測定するセンサーを設置しまして、「酸素が少ない?じゃあ燃料減らそう」「酸素が多い?じゃあ燃料増やそう」みたいなフィードバックもかけてます


技術的な話が長くなって恐縮ですが、この排気管に設置するO2センサーにも大きく分けて2種類ありましてね

一般的な車両に使われているのはナローバンド型のO2センサー

安いし壊れにくいんだけど、測定は荒い

排ガス規制をクリアするためにメーカー純正で搭載されているのは主にこっちのナローバンド型O2センサー


で、レース車両とか高級車に使われるのはワイドバンド型のO2センサー

センサーひとつで1万円とかするし、壊れやすい、けども、かなりこまかく測定できる


今我々が運用しておりますスズキのGSXR-125におきましてももともと搭載されている排気管のO2センサーはナローバンド

なので排気管にセンサー取り付け口を溶接で追加してワイドバンドのO2センサーを取り付けました



上が元からついてるナローバンドセンサーで右側が後から追加したワイドバンドセンサー

そのセンサーからの情報を元に「燃料が濃いよ」とか「燃料が薄いよ」とか動的に制御をかけていくわけです





基本的にメーカーさんが一般市場で販売している車両なんてのは「一切改造しない」というのがまず大前提なわけですよ

エンジンへの空気の流入量が桁違いで増えるとかそういうことはまったく想定していない

だもんで気温変化とかで吸入空気が含む酸素量がどれだけ変化するかなんていう「補正幅」にもある程度限界があるわけです



マフラーを換えるとかエアクリーナ周りの構造を変更して空気を取り入れやすくするとかやった場合には、このメーカー純正のコンピュータの制御範囲を超えてしまうかもしれないわけですよ

かといってその純正品のコンピュータはデータの書き換えができないようになっているものがほとんど

あくまでも「一切改造しない」というのが前提ですからね


ということでその制御回路をいろいろ書き換えができるような物にまるごと載せ替えてしまうということになるわけです

これが「フルコン」と呼ばれる手法

あと、メインのコンピュータはそのままに、出力された信号にあとから割り込んで補正をかける「サブコン」ていう手法もあります

参加するレースによって「サブコンのみ使用可」とか「フルコン使用可」とかいろいろルールがわかれますのでちゃんと確認しておきましょう



いろいろ好き放題やれるのはやっぱりフルコンです

ということでウチのチームでは台湾のaRacerというメーカーの製品を使用しております



バブルの時代(30年前)は4輪の界隈で「ロムチューン」なんてのが流行ったみたいですね

要はこれのことです

エンジンコントロールユニットのプログラムを書き換えていろいろアレコレしようという




とにかく誤解していただきたくないのは「ECUだけを書き換えても決してパワーアップはしない」ということです

マフラーを換える、エアクリーナの構造を変える、カムシャフトを交換して吸排気のプロフィールを変える

まずはそういった「物理的な変更」があって、それによって「エンジン内部の空気の流れ」が変わる

空気の流れが変わったからそれに合わせて燃料の供給量も変えてやってバランスをとってやる

という流れです



だから機械部分をまったくいじらずにECUだけ「フルコンにしました!」とかやったって何の意味も無いのですよ

機械を物理的にいじって、空気の流量がかわるからそれに合わせて燃料の供給量も変える

フルコン入れたらとにかく速くなるとかそういうのはあくまでも幻想です

「フルコン」を「ロムチューン」に置き換えてもよろし




ウチの場合はマフラー交換とかで空気の流れが大きく変わったのでそれに合わせてフルコンを導入して燃料と空気の比率を調整しているという感じですね

GSX-R125においては純正品のマフラーと社外品のレース用マフラーでは必要とする燃料が2割ほど多くなる感触です

ノーマルのECUでは補正の対応幅を超えていると思います

社外のマフラーに交換するなら少なくともサブコンは導入しないと



ただ、サブコンというのはだいたいが「このエンジン回転数でこのスロットル開度のときはこのくらい燃料を増やす」っていう程度の制御しかできません

補正した結果の燃料が濃いか薄いかなんてのはやはり走ってみてフィーリングで評価するしかありません

これがフルコンになりますと前述したワイドバンドO2センサーで直接空気と燃料の比率が濃いとか薄いとか測定してフィードバックかけることができるわけです



にしても、その設定がポンと決まるわけではなく

アクセル開け始めはもうちょっと濃くしておいた方が良いかなあとかいろいろ走るたびに試行錯誤は繰り返しているわけです



フルコンのセッティング作業の基本的な流れとしましては

まず車載のコンピュータと手持ちのノートパソコンなどをbluetoothとかUSBとかで接続しましてね

車載コンピュータに記録されたデータなどをもとに縦横の表で記録されている「このエンジン回転数でこのくらいのアクセル開度の時はこのくらいの量の燃料を供給しなさい」というマップに補正をかけていく

ワイドバンドO2センサーで取得した数値を元に走行中にもそれなりに補正はかけてくれているんですよ

でもその「補正幅」があまりにも大きすぎるのはよろしくない

いつ壊れるかわからないのがワイドバンドO2センサー

ベースのマップをできる限り詰めておいて、センサーによる後付けの補正は最小限に、というのがあくまでも基本

そうやって詰めたパソコン上で編集したデータを車載のコンピュータに送り返して保存する

で、実際に走ってみてさらにそのマップへの「補正」の程度を上下させていくという作業の繰り返しなわけです



実際にやってみると、走るたびにいちいちキャブレタ分解してジェット交換するよりよっぽど楽なんですわ

ライダーが走ってみてこう感じたという「主観」頼りだったのが従来のキャブレタ方式での運用だったのですが

近年のインジェクション式ですとそういったライダーの主観だけでなく、客観的に「このエンジン回転数でこのスロットル開度だったときに空気と燃料の比率がこれくらいでしたよ」なんてことを全部記録しておいてくれたりしている


あくまでもオプションではありますが、このエンジンコントロールユニットに追加のユニットを増設しますとGPSであったり、車体の傾きや加速度を検出するジャイロセンサーなども追加できまして
コースのどこでアクセルをどのくらい開けていたかとか、車体をどれくらい傾けていたかとかそういうことも全部解析できてしまうようになるという
タイヤが滑ったら勝手にスロットルを絞ってすべり量をコントロールしてくれたりとか

スゴい時代になったもんです

これを「なんでも自動制御になってつまらなくなった」と感じる人もおられるでしょうが

私は個人的にこう感じているのです

「できること」「知れること」が劇的に増えた

つまらなくなったなんて思わない

とにかく「可能性」が広がった

私は昨今の電子制御化をかなり肯定的に受け止めております

この感覚を一度経験してしまったらもうキャブレターのバイクには戻れない



駐車場に停めた車に積んだままのバイクの電源を入れて、ノートパソコンとリンク

内部のデータを落としたらバンガローに移動してマップをちょこちょこいじる

また駐車場に戻って編集したデータをバイクに転送

あ、いや、まてよ?ここはやっぱりこうなんじゃないか?

思い直してマップを再編集




そんなことを繰り返している間に、仕事を終えたチームメンバー達が三々五々集まってきて

「明日も早いんだから飲み過ぎんな!おら!さっさと寝るぞ!」とか

俺はおまえらのお母ちゃんじゃねえんだけどなあ、と思いつつ布団に潜り込む私はチーム幹事




明けてレース当日



雨続きだったので心配していたのですが路面コンティションは良好



で、例によってウチのチームの備忘録的な記載

エンジンは完全なノーマル

フロントはBT39SSの幅100 空気圧冷間1.4

リアはスーパーコルサ幅140 空気圧冷間1.8

ドライブスプロケット12T


リアサスはアラゴスタ

と言ってもこちらは基本的には減衰用のダンパーだけ作っているメーカーさんでして、スプリングの方は別途手配

購入したショップさんであらかじめダンパーの特性も変更してもらっているので他の方には一切参考にならないのだけども

バネレートは標準よりちょいと高め13kgf/mmのHALというスプリングメーカーさんのものでイニシャルプリロードはほぼゼロ

これはウチのチームのメンバーが最軽量で50キロあるかないか、最重量が90キロ近いという特性によるものでして

軽いライダーに合わせてセットすると重いライダーの時にフルボトムする

重いライダーに合わせると軽いライダーの時に跳ねまくる

イニシャルプリロードの変更だけではもうどうにもならないのでバネレートごと変更しました



これは決して「ベスト」の選択ではありません

公倍数というか「全員がそれなりに妥協できる点」を探ったらこうなったというだけの話

今回は伸び側の減衰を-15ノッチとかなり弱く設定して走ってみたのですが正直やり過ぎましたね

次はもうちょっと伸び側減衰強くしよう

圧側は-10ノッチ






リアに使っているピレリのスーパーコルサはちゃんと暖めてから使わないと明らかにおかしな摩耗の仕方をするので念のためにタイヤウォーマーをかけます

ちゃんと暖めてから使わないと本来の性能が出せないとか、これもう公道で使うタイヤじゃないよね?

まあ公道でタイヤの端まで全部使うほど車体寝かせて走りたいって言う時点でそいつはもう頭がおかしいというか

そういう走りがしたかったらサーキットに行けと


「俺は走り屋だ」とかいきがってる人たちはもうすでに現代社会においては「暴走族」とか「ヤクザ」とかと同じ「反社会勢力」に分類されてしまっているのだという自覚はもっておいた方が良いですね

公道で膝すって曲がるとかは今のご時世ではもはや恐喝とか強盗とかとほぼ同じレベルの犯罪行為扱いなんですよ、と

膝すりたいならサーキットへどうぞ

いくらでも擦れますよ膝

膝するのなんてアタリマエのこと過ぎていまさら誰もなにも言いませんからいくらでもすってください






以上

前置きが長くなりましたがここからレースのお話

以前から書いておりますがウチのチームはもともと大学時代のバイクサークル仲間で構成されております

で、その大学時代のサークル仲間のさらに高専時代の同級生という方達とも最近一緒に遊び始めましてね

友達の友達はみな友達だ

同年代ですからしょせんは「オッサン」なんですけどね

ということで今回はそんな新メンバーがお一人加わりまして、みんなで6時間走っていきますよ、と



今戦はウチのエースたるNORY君が家庭の事情で欠場

鉄板のスタートライダーが欠場で新たなメンバーさんが加入

ということは

スタートライダーは君だ!


ものすごく雑w



「そんなんで良いんですか?」

「何が悪いんですか?」

論破



もともとレース中に発電機のオイル交換とか好き勝手やってる連中だからね

あくまでもレースは「休日を丸一日遊び倒すためのひとつのオプション」



勝つためにガツガツなにかやるようなメンバーじゃないのよもともと






ということで

ぐだぐだのままレーススタート

スタートして、わずか5分で赤旗中断

スタートからほんの数周でエンジンブローさせてしまい、コース上にオイルをばらまいてしまったチームがおられましてね



とにかくほんのちょっとでもパワーを出したいってのはレースに参加するみなさんに共通する「渇望」と言っても過言ではない欲求なんだけども

過ぎたるはなお及ばざるがごとし



コース上のオイルの除去とかで10分ほどレース中断



その後、今回初参戦のサエキさんがちょっとばかり余計な欲を出してしまう

「速く走りたい」と



ここでもなんどもなんども書いてますけどね

6時間なんていう長丁場の耐久レースで勝とうと思ったら考え方を切り替えなきゃいけないんですよ

速く走る必要なんてこれっぽっちも無いんです

とにかく転倒しないこと

とにかく車両を壊さないこと

とにかく走り続けること

ウサギとカメで言ったらカメの方


たとえ1周あたり0.1秒速く走れたとしても

無理して転倒してその後の回収や車両の修復作業に10分とかかかったら

その転倒によるロスはたかだか0.1秒速く走ったところで取り戻せるようなものではないのですよ


耐久レースで勝つためには無理して前に出るのではなく、とにかく止まらずに走り続けるのが大事

とか、いつもうざってぇなあとか思われながらも口を酸っぱくして説教し続けてきたチーム幹事のワタクシ

新規加入のサエキさんにはいまひとつ伝わりきっていなかったもよう


前を走る他チームの車両

参加しているカテゴリーが違うため、エンジンの出力というかストレートでの速度はあっちが上

だけど、ライダーさんが不慣れなせいかコーナーリングスピードではこっちが上

となるとですね

「抜きたいのになかなか抜けない」みたいなイライラする状況になるわけですよ

そこでグッと我慢できるかどうかが耐久レースの「キモ」なんですが

残念ながら今戦初参加のサエキさん

我慢できなかった模様


次のコーナーの立ち上がりで少しでも前に出るために、と、前走車との距離をギリギリまで詰める

本物のプロ同士の戦いだったらこういう戦術も「アリ」なんですけどね

残念ながらここは「プロ同士」の戦場ではなくただのバイク好きのシロートが集う草レース

ギリギリまで詰めた前走車がミスをして失速

その後輪に自分の前輪を当ててしまい車両ごと前転

後続車両にも轢かれてまあ散々な目に遭っておられました



言わんこっちゃない

そういうのは本物のプロ同士の戦場でやる戦術なんだってば

初心の方もたくさん混じってるこういうオッサンの草レースでああいうガチの戦法は良くない


草レースは安全第一

私はそう考えております

他のチームの方と絡んで転倒して大けがするリスクを背負ってまで削る0.1秒に、果たしてなんの意味があるのかと



転倒したサエキさんには申し訳ない話ですがかなり辛辣に面と向かって批判させていただきました

郷に入らば郷に従え

これは

こういうレースなんです

ここは初心の人も普通に参加しているエントリークラスの草レースなんです

この局面で相手は絶対こう動くはずだみたいなプロレベルの読み合いを楽しむようなレースではありません

ガッチガチのプロみたいな競り合いがしたいならそういうカテゴリーのレースにエントリーすれば良いだけの話でして

相手が予想外の動きをしてきたから突っ込んでしまった、ってのはちょっと、ね

そういう初心の方の予測できない動きも全部織り込んで、それでも生き残れるように立ち回らないと勝てないのがオッサンの草耐久レース

勝つための立ち回りよりも負けないための立ち回りがより優先されるカテゴリーでございます


このレースにおいては

コース1周あたり0.1秒速く走るなんてのは大して重要なことじゃない


トラブルに巻き込まれず、とにかく車両を壊さず、転倒せず、ゆっくりでもなんでもとにかく「走り続ける」ことが一番大事

「平均値」で戦うのが耐久レースなのであって「トップ値」はたいして重要なファクターではないのです



レース後のチェックで

この無理な攻めた挙動での転倒により結局フレームとステアリンスステムがゆがんでしまっていたことが判明

フレームとアンダーブラケットの部品交換で工賃抜き部品代だけで9万円の出費となりました

チーム運営の帳簿上としても正直これはかなり痛い






スタートライダーが車両の骨組みごとゆがませてしまったため、その後の走りはいろいろと妥協の産物

「ブレーキかけると振動が出る!」

そら振動くらい出ますよこれだけゆがんでたら



じゃあレース中になんか修復とか交換とかできますか?って言ったら「何もできない」

もうこのゆがんだ車体でできる範囲で走るしかないんですよ

まだ走行不能でリタイアしなかっただけマシと考えないとね



ということであとはもう淡々と

不具合が生じた車体と相談しつつとにかくこれ以上止まらないように走る



5月ともなると路面温度も上がりまして写真撮ると「逃げ水」的ななにかも映り込むようになりまして

とにかく暑い








車両が右にねじれてるんならかえって左旋回は得意じゃん?

調子に乗って遊んでたところを他のチームの方に撮っていただきました

「友竹さん、バンク角ヤバいっすねw」

いやフレームが右によじれてただけッス








草レースというのはとにかく転倒や怪我が多い物でございます

ウチのチームでも昨年一年間で鎖骨が2本と手の小指が1本折れました

過去10年に遡りますと背骨が5本とか足首が粉砕とか加わりますがこれはワタクシ個人のことだったりするのでもうほんと耳が痛いというか

あまり他人様のことをとやかく言えないというのが正直なところ

とにかく

我々はもう初老すら通り越そうかって歳ですから

怪我するとホント治らないのですよ

安全第一で細く長く続けていきたいと考えております





前に初心の方が走っているなら無理に追い越そうとしない

6時間、600周に及ぶ長丁場のレースの中のほんの1周における0.1秒のラップタイムと参加者のお互いの安全を天秤にかけますれば

答えなど考えるまでもないでしょう

それを参加者の皆さんがそれぞれ心がけるだけで、オッサンだらけの週末の草レースというのは今よりもさらに居心地が良くなりまして、新規参入の方も増え、今後もより盛り上がっていく可能性があるのではないかと愚考する次第であります





今回もいろいろありましたがインジェクション125ccクラスの3位にはなんとか滑り込ませていただきました



後日、他チームの方から「ウチの若い新入りがレース中にアナタと競り合わせていただいてものすごく楽しかったと言っておりました。他のレースにも参加したいと意欲満々です、ありがとうございました」なんて連絡もいただきまして

ロートルのオッサンとして、ちょっとばかりは世間の誰かのお役にたてたのかなと、すこしばかりうれしくなりました




次戦はひと月後、7月だというのに

ゆがんだフレームの交換部品の手配でかなり手間取っております

なんとか車両を復活させて次戦に挑まねば





オッサンはまだまだ走るよ


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