オトナの外注(外部注文)で足ヒレを作る。

さて、今回の工作もまたしても足ヒレです。

僕がカーボンFRPを使って足ヒレを作っているのはいまさら説明するまでもないですね。




で、ふと疑問に思うことがあるわけです。

なぜ、カーボンなのか?

本当にカーボンじゃなきゃいけないのか?

と。




実を言うと、僕が今カーボンFRPを使っているのは「作りやすいから」という理由がほとんど大半を占めているんです。

個人の工作の範囲でちゃんと精度が出せるのならば材料は何でも良い、とさえ思ってるし。




僕の持論では、フィンにとって大切なのは2点。

ひとつは人間との接点であるブーツポケットがしっかりとしていること。

もうひとつはブレードの剛性バランスがとれていること。

このふたつ。




剛性バランスってのはいろんなところで何度も書いてますね。

根本から先端に行くに従ってしだいに柔らかくなっていく、その割合のこと。

このバランスがちゃんととれている足ヒレならば、ブレード全体がしなやかにしなって水をしっかりととらえ、後方に押し出してくれる。

釣り竿しかり。

竹だって、柳だってそう。

先端に行くに従ってしだいに細くなり、力がかかればきれいにしなる。

決して折れることはない。

加えられた力をうまく受けながして、逃がすようになっているんです。






まずはこの剛性バランス。これが一番大事。

カーボンがどうとか、ゴムがどうとか、そういうのはバランスがちゃんととれてからのお話。

僕はそう思ってるんです。

でも思ってるだけじゃ説得力がない。





ということで学生時代からの友人、「頼れる男」スギの力を今回も借りることになりました。

この男はプラスティック製品の試作みたいなそんな仕事をしているんですよ。

その仕事の合間にちょちょいと削り出してもらったのがコレ。

数日前に家に届いたコレは見てのとおりのプラ板です。




材質はPOM、ポリオキシメチレンというものだそうです。

OA機器から家電、自動車までさまざまなところで普通に利用されているプラスティックです。

繰り返し曲げなんかの耐疲労性にすぐれるということでスギが選択してくれました。

こういうのはやっぱり本職の知識を借りるのが一番だよな。




で、このPOM板をですね、ある割合で根本から先端にかけて薄くなっていくように削り込んでもらいました。

カーボン版ものまに屋フィンとほぼ同じ剛性バランスになるように、寸法はこちらで指定させてもらいましたです。





「フィンを削れ」の項でも書きましたけど、こういう「板を薄く削り込んでいく」という加工は手作業ではできないんですよ。

板の場合、厚さ方向の寸法は3乗でその硬さに効いてきます。

板厚が半分になると硬さは1/8になっちゃうということ。

厚さ方向の削りというのはほんのわずかな誤差が大きく響いてしまうのです。



ということでNCフライス盤という工作機械できっちりと削りだしてもらいました。

根本は厚さ5mmありますが、先端は厚さ0.5mmまで削り込んであります。







そうです。なんと今回は加工をすべて他人にやってもらったのです。

外注です。

他力本願です。

僕は簡単な図面を渡しただけ。

いやぁ、オトナだなぁ。









で、この板をちょちょいと切り出して手持ちのブーツポケットに接着すれば「ものまに屋フィンPOMプロトタイプ」の完成です。

いうなれば一刀彫です。

これはこれでカッコイイじゃねぇか。などと自画自賛してみたり。

一枚板の素材から削り出しで目的のバランスを作り出すという基本的なコンセプトはOMERのBAT30に近いかもしれません。



しかしアレだよな。

バイク乗りってのはなんでか「削り出し」とか「アルマイト」とか「チタン」とか「カーボン」とかそういう単語に弱いよな。






まぁいいや。

さっそく水の中に持ち込みます。

かなり良いフィーリングです。

バランスをちゃんととればプラスティックでも良いブレードが作れるはずだとは思っていましたが、これはちょっと期待していた以上かも。

カーボンブレードとの違いはと言えば、アップからダウン、ダウンからアップへの切り返しのときにそれを感じます。

カーボンブレードには存在するあのビョンビョンとしたバネのような推進感がちと弱い。

まぁでもカーボンブレードの数分の一の材料費でこれだけのモノが作れるというのはかなり意味のあることなのではないかと。







カーボンがどうとか、グラスがどうとか、そんな話題がいろんなところで聞かれますが。

やはりフィンというのはどんな材質のフィンであろうとも剛性バランスさえしっかりととってやればそれなりに水をつかむフィンになってくれるのだと、あらためて確認できた今回の工作でした。

材質にこだわる、それ以前にチェックするところがもっと他にあるだろうがよ。

と、まぁそんなことを思ってみたりみなかったりしたわけです。








というわけで持論の裏付けをとりたいがためにやってみたような今回の工作ですが。

実際に製作するためには工作機械で削り出すか、金型を作ってインジェクション成形するか、そんなところしかないわけです。

毎回スギに加工を頼むわけにもいかないし、金型なんておこすにはものすごくお金がかかるんです。

「100本くらい作るとして金型代込みで100万円でなんとか」なんてスギは言いますが。

あいにく俺の足は2本しかないので100本も要りません。ムカデじゃねぇんだから。






そんなプラスティック成形。

僕にはやっぱり手が出ないのです。

僕がカーボンFRPを使っているのは「僕がそれしか扱えないから」なんですね。

小数製作で、個人が用意できる範囲の設備でも寸法精度の高い板が作れる。それがFRPの魅力。




僕が金属関係の仕事に就いていたら、バネ鋼とか形状記憶合金の超弾性とか、そういうものを使っていたと思います。

プラスティック関係だったらやっぱりプラ版から削りだしていたと思います。

FRPで作っているのは僕が漁師だから。

それだけの話。





フィンはその剛性バランスが命。

それこそがすべて。


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