2022 ミニろく第3戦 ショートサーキット

2022/07/24記


2022年7月3日

例によってミニバイク6時間耐久レース「ミニろく」でございます



今回は富士スピードウェイのショートサーキットが会場です


最近いろいろな銘柄のタイヤを試してみておりまして、カートコースの方ではもっと細いタイヤで良いのではないかとかいろいろ試行錯誤中なんですが

ショートサーキットにおいてはいつもどおりリアにピレリのスーパーコルサ幅140空気圧冷間180kPa、フロントはブリジストンBT39SS幅100空気圧冷間140kPa


次戦の筑波サーキットでは前後ともピレリのスーパーコルサで行こうと考えております

速度域とかコースのレイアウトとかによって適したタイヤってのも変わってくるものであろうと

2時減速比、スプロケットはレース前の練習走行で一度13:45を試してみたのですが、やっぱり12:45のほうが良さそうだということで元に戻しました

エンジン周りは完全にノーマルのままで、排気系だけ社外品に換装

aRacerというブランドのECUを使用してセッティングを出しております


今現在運用しているこのスズキのエンジンは以前運用していたホンダの縦型エンジンにくらべてとにかく頑丈

ミニバイクレースというフィールドにおいて、GSX-R125および150は最近かなり数が増えてきたように感じておりますが、今のところいまだエンジンに関するアフターマーケットパーツはまず見かけませんね

これが大正義ホンダ様のエンジンだったら社外パーツだけでエンジンが組めるくらいたくさんの種類のパーツが出回っているのですが、やはりスズキじゃねえ

とか


風の噂では最初に問題が出始めた2017年の12月、あれからもう5年近く経っているにもかかわらず、いまだ純正品の新品クランクシャフトが2時間回したらポキポキ折れるという例のあの不具合は改善されていないようです

http://monomaniya.web.fc2.com/motorcycle/mini6/20180512/race20180512.htm

いや、私はもう今後絶対にホンダのバイクだけは買いませんからどうでもよいことなんですけどね



明らかに生産上の品質管理ミスとしか思えないトラブルだったんだけど、大正義ホンダ様がそれをかたくなに認めないまま、5年経った現在でも新品で購入したクランクシャフトがほんの数時間エンジン回しただけでポキポキ折れまくってる

当時ね、一応「こんなことが起こりましたよ」って大正義ホンダ様にメール差し上げたんですよ

その返答メールを見て「あ、こりゃダメだ」と

すくいようがない

その場で今現在運用中のGSX-R125の発注かけました

今思えば、あのとき大正義天下のホンダ様の製品にさっさと見切りつけてホント良かったなあと



今のスズキのエンジンはホント頑丈で良いわあ

オッサンの趣味の草レースにおきましては「ランニングコスト」というのはかなり重要なファクターでありまして

パワー出せるけどお金かかるよ、毎レースごとにエンジン全バラ部品交換ね、じゃあやっぱりキツいのです

「そこそこの性能」で必要十分なのですよ、とにかく頑丈ならば

しょせんはオッサンがおこづかいの範囲で週末に楽しむ草レースごっこの道具なんですから



バランサーをちゃんと搭載したDOHCエンジンでもともと排気量150ccで設計した上で125ccにダウンサイジング

強度の余裕がたっぷりあるんですよ


バランサー無しのOHCだったホンダの縦型では14500rpmあたりが限界

バルブジャンプしてエンジンがおしゃかということがままありましたが

このスズキエンジンは16000とかまで十分耐えると思われます

そのメリットの対価としてかなり重量が増えているわけですが

それでも毎レース毎レースエンジン壊してリタイア、十数万円かけでエンジン全バラオーバーホールとかそういうのに比べればよっぽどマシ

頑丈なのは良いことだ




以下「そう言えば」という小話


私、ものすごく昔の若い頃、草刈り機とかの汎用農機エンジン作ってるメーカーに勤めてましてね

開発部門というか実験部門というかそんなところで毎日毎日製品の出力計ったり騒音計ったり振動計ったりとかしてたわけです

31ccのエンジンで1.1馬力とかだったかな

バイクのエンジンに比べるとものすごく非力

バイクだったら50ccで7.2馬力とか出してた時代です

最近youtubeで草刈り機にチャンバー付けてみたとかやってるそんな動画を拝見してね

当時のことをふと思い出したのです

私も当時上司に質問したものです

我が社に限らず、汎用農機用のエンジンってなんで31ccで1.1馬力とかが業界の標準値なんですか?バイク用エンジンだったら同じ排気量でもっとパワー出てますよ?

それに対する上司の回答

「いややろうと思えばそらもっと出せるよ。でも出力上げるとそれだけエンジンの構造材すべてを頑丈にしなきゃならないでしょ?頑丈にしたらその分重たくなるのよ。君だっていくら出力が出てるからって50ccバイク用のあの重たいエンジンを担いで草刈りしたいとは思わないでしょ?」と


じゃあ同じ馬力でもっと排気量減らせばコンパクトになるじゃん、という方向に話を振ると、「小排気量で高出力って方向でやろうとすると加工精度のばらつきの影響が大きく効いてきすぎてコスト的に見合わない」と

小さいエンジンですとね

スパークプラグをメーカーが推奨している「手で締め込んで止まったところからさらに1/2回転締め込んでください」とかそういうのをきっちり守るのと、限界までガチガチに締め込んだのと、みたいな、プラグの締め込み具合一つでエンジンの効率に大きな影響を及ぼす「圧縮比」が大きく変わってしまうのです

圧縮比が変わればエンジン出力が変わる

たしかにギリギリまで精密につめれば排気量10ccで1馬力とかのエンジンだって作れるかもしれない

だけど、不特定多数のシロウトユーザーさんが扱う工業製品でそんな余裕の無い設計はできないし、しちゃいけないんだよ

だから草刈り機なんかの農機用エンジンは31ccで1馬力だし、チャンバーとかのバイクでは一般的な部品を使ってパワーアップもしていない

なんて話をしてくれた当時の技術部の上司とは今でも年賀状のやりとりをしております

それでも当時の技術部長は「終活」だとかで「今回の年賀状で最後のご挨拶とさせていただきます」とか言ってきて

そら今50歳の私が新卒だったころの技術部長ですから当時ですでに50代後半

今はもう80とかそのくらいか

お歳を鑑みればいたしかたなし

時の流れを感じますね

諸行無常




閑話休題

で、今回のレース

天気予報が若干危うい

午後から高確率で雨

一般の公道を走るのであれば雨だろうと晴れだろうと天気によっていちいちタイヤを履き替えるなんてことはないわけですが

レースですとまた話は違ってきます

とにかく速く走ろうと思ったら乾いた路面にはそれ用のタイヤ、雨で濡れた路面にはそれ用のタイヤというような使い分けが必要になってきます

6時間という長丁場のレースではレース中に路面のコンディションが大きく変わってしまうことがままありまして

どのタイミングでタイヤを交換するかなんてことも考えなければなりません

正直悩みどころ



なんてグダグダ悩んでいる間にレーススタート



コース脇に車両を一列にならべ、スタートの合図と同時にコースの反対側からライダーが走って来てバイクにまたがりスタートするといういわゆる「ル・マン方式」




で、スタートと同時にマシンに駆け寄ってきたウチの第一ライダーNORY君がですね



いきなりのミス



マシンに駆け寄って来て飛び乗るときにハンドルにあるエンジンストップスイッチに触ってしまうことが多いのです

ここのところかなりの確率でやらかしてます

今回も事前に「スタートの時にキルスイッチには触らないようにな」と口を酸っぱくして注意喚起していたのですが

やっぱり触ってしまいました


止まってしまったエンジンを再始動してスタートするまでの間に他チームの車両はすでに飛び出していき、ほぼ最下位に

「だからあれほど言ったじゃんか!」と後で説教したのですが

実を言うと私も同じミスを何度もしています

こうもなんども同じミスが繰り返されると言うことはマシンの構造が人間工学的に最適化されていないと見るべきでしょう

すなわちアクセルグリップのすぐ横にエンジンストップスイッチがあるその構造自体に問題がある、と

ただ、レースのレギュレーションで「ハンドルから手を離さずにエンジンを止めることができる位置にキルスイッチを配置すること」というルールがあるのでホイホイと移動するわけにもいかぬのです

どうしたものかねえ?

要検討



とはいえこれは十数分で勝敗が決まるスプリントレースではありません

6時間に及ぶ耐久レース

スタートにおける10秒とかそのレベルのロスはもう誤差の範囲内というか

無視できるレベルの誤差でしかないのですよ

ちょいとばかり遅くなったところでレースの大きな流れには影響なし

裏を返せばいろいろ無理してコース1周あたり0.1秒とか削ってもそれもまた6時間という大きなレースの流れにはほとんど影響しないのです

耐久レースは「平均値」の戦い

まずちゃんと6時間走りきるのが大事

1周2周ベストラップ記録しても、転んでリタイアしたらそれは「負け」

まずはちゃんとゴールするのが大事

で、「平均値」ですから無理して頑張ってトップのピーク値をいくつか稼いだところでこれもあまり意味が無い

「平均値」を上げるにはボトム値の底上げが一番効く

とにかく「止まらない」のが耐久レースでは一番「強い」のです



前を走っている車両が自分よりもわずかに遅い

そこで無理をして抜きに行って接触転倒とかなりますと耐久レース的には下策中の下策

無理して転倒して十数分とか時間をロスするくらいなら自分よりもわずかに遅いその前走車の後ろにくっついて遅くとも安全に走り続けた方が結局勝てるのですよ耐久レースというものは


どれだけ速く走れるかではなくて、どれだけ我慢ができるかがオッサン草耐久レースにおける勝敗の分かれ目


そんなことをチームの幹事として常々主張し続けさせていただいてきましたが

今回は特に口を酸っぱくして「安全第一が勝利への最短ルートである」とメンバーの皆に周知徹底

ウチはね、転けなければ勝てるのよ普通に



で、レース

今回は6時間のレースにライダー5人で臨んでますので、単純計算でひとりあたり72分の走行

オッサンは体力的にへなちょこなので各ライダーが35分くらいを2走するという感じでスケジュールを組みました


7月です

暑いです

しかも途中からパラパラと雨が降り始めるほど大気に水蒸気が含まれております



路面が次第に濡れてきて

蒸し暑さも最高潮





ここ数年私は仕事するときにいわゆる「空調服」という電動ファンを取り付けたジャケットを愛用しているのですが

そんなんじゃ甘っちょろい、と、充電式のブロワーをピットに持ち込んできたチーム員がいましてね



走り終わったら革ツナギの下にダイレクトに風を送り込んで強制冷却

これマジ最高






3時間

レース半分を消化したあたりで雨が本降りに



路面は完全にウェット

こうなりますとタイヤをどこでレイン用に交換するかの駆け引きが勝敗のキモになってきます

簡単な足し算引き算なんですけどね

濡れた路面において、ドライ用のタイヤとレイン用のタイヤではラップタイムに2秒とかの差が出てくるわけですよ

1周40秒とかのコースで2秒の差ですから結構デカいです

これだけ見れば圧倒的と言っても良いくらいの差です


じゃあ、レース中にタイヤ交換するってなったらというところまで「込み」で考えるわけですよ

耐久レース用に短時間でタイヤ交換するとか考えて設計されたわけでもない昔ながらの構造のバイクです

「平均値」で戦っている耐久レースの最中にバイクを止めてタイヤを交換する

どんなに急いでも5分とかかかるわけです

ウチのチームは実質もっとかかるかな?


そのタイヤ交換作業のためにロスする5分と、そのあと稼げる1周あたり2秒とかのアドバンテージ

5分

300秒

周囲のチームがまったく同じペースで走り続けていると仮定するならば

タイヤを交換することで1周あたり2秒のアドバンテージが得られるとしても、タイヤ交換で止まった5分を取り返すのに150周必要になるんです

1周40秒のコースだったら100分、レインタイヤに交換して1時間半以上かけて走り続けてようやくチャラ

「止まる」ということがどれだけでかい「負け要素」なのかおわかりいただけるかと

いちど止まってしまったら、その分を取り返すのにものすごく頑張って走らないといけないのです



だから、そういった足し算引き算をした上で、「レインタイヤに交換しよう」とかそういう判断をするのです

レインタイヤに交換することで得られるものとレインタイヤに交換することで失うものを冷静に天秤にかける


今回はレースの中盤、6時間のうちの3時間あたりで雨になりました

そこで我々が下した判断は「続行」

レインタイヤに交換することなくドライ用のタイヤで最後まで走りきる

ペースは格段に落ちます

レインタイヤに交換した他のチームがどんどんと先に行きます

それでも

あの人達はタイヤ交換のために一度立ち止まってしまった

その間我々は走り続けた

この差というのは本当に大きいのです



ゴール前最後のライダーは私

コーナー進入前に車体を立てたまましっかりと減速する

コーナーをゆっくりと回って、車体をちゃんと立ててから最大限の加速

とにかく基本に忠実に

ラップタイムはドライコンディションの時から5秒落ちとかそんなところまで落ち込んだけども

とにかく転けずに走り続けるのが最優先事項



そうやって迎えたチェッカーフラッグ



勝てましたよ





俺たちは強い

とか、とあるマンガの有名なセリフをマネさせていただきますが



我々は学生の頃からバイクに乗り続けてきた大学時代のバイクサークル仲間

そこそこの経験者がそれなりにそろった「ボトム値」が高いチーム

決して他人様に誇れるほど速いわけではないのだけども、じゃあと言って遅いというわけでもない

「平均値」で戦う耐久レースにとってはからずも特化してしまったメンバー構成

誰かが妙な欲をかいて「速く走ってやろう」とかやらない限りは普通に勝てる

そのくらいのポテンシャルは持っているのすよ今参加させていただいている草レースのレベルにおいては



ただ、その「抑え」がなかなか効かないのですよ

どうしても「かっこよいところ見せたい」とか欲かいちゃって転倒リタイアとかさ

それが無ければ勝てる

結局、オッサン草耐久レースって自分自身の欲との戦いなんだね















チームメンバーの平均年齢がとうとう50歳超えてしまいましたが

オッサン達はまだまだ走るよ


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